映画雑感ー本屋時々映画とドラマ

映画・ドラマレビューばかり書いている書店員のよもやま話

2018-01-01から1年間の記事一覧

イカイカシャコシャコ(『FRIED DRAGON FISH』岩井俊二)

岩井俊二監督の『FRIED DRAGON FISH』で、深海魚のカラアゲをワイルドに食べる美少年・浅野忠信を観ながら、 もくもくとシャコを剥いて、食べていた。 人も魚も、なんの躊躇もなく殺せる上に、無造作なのにあんなにお洒落な部屋で過ごしちゃってる(壁の時計…

死神のようなバクと、確かなものなどない、この世界の話(『寝ても覚めても』)

映画『寝ても覚めても』(濱口竜介監督)。 「俺の代わりはちゃんといるから大丈夫」 麦(バク)はそういった。突然現われ、消え、しばらくしてまた現われ、唐田えりか演じるヒロイン・朝子をかっさらっていく彼は、まるで宇宙人のようだった。黒沢清監督の…

「道」な一日(『日日是好日』・『顔たち、ところどころ』)

最近、仕事の関係で引越しをした。まだ慣れない街を自転車で疾走する。最寄の無人駅は、たまに地域の人たちが集まる立ち飲み食堂に変化するそうで、その次の日なのだろう、木製のベンチには酔っ払いの走り書きのような落書きと柿ピーが詰まっていた。会った…

海を駆けてきたのです(『海を駆ける』)

先日海を駆けてきた。 覚えていないだろうか。ドラマ『モンテ・クリスト伯』を観ている最中、CMでのつかの間の休憩中、突然流れる映画の宣伝に圧倒または当惑したことを。「真海さん(『モンテ・クリスト伯』での役名)がまたもなにやら海から漂着している!…

過去に囚われた2つの雲の物語『浮雲』と『乱れ雲』(成瀬巳喜男監督)

ただのミーハー心で聴いた銀杏BOYSの「骨」が、最近頭から離れなくて。 「浮雲のように私を連れ去っていく」というフレーズを繰り返し呟いてしまう。 そう、それで『浮雲』。 学生の時見たときは正直よく分からなかった。道ならぬ恋の熱情も消え、夫婦になる…

愛すべき、ちょっと切ない男たちの物語『素敵なダイナマイトスキャンダル』

幼少期の末井が最後に見た母親・富子(尾野真千子)は、寝ている彼を見下ろしていた。 それが夢だったのか幽霊だったのか、はたまた真実だったのかはわからないが、朝母を捜しに出た父親と息子たちが聞いた山奥の爆発音と、彼を見下ろしている母親の表情が、…

『勝手にふるえてろ』のヨシカは私だ

これはもう、「私」なのだ。そうとしか思えなかった。 一人暮らしの小さな玄関とありふれた茶色のコート、となりの部屋でオカリナを吹いている片桐はいり、イライラを抱えて部屋に帰った時の叫びやらなんやら。浮ついた期待が弾けた後の、広い世界の中で一人…

ときどき「ライターの」と言われることもある、やさぐれ書店員のはなし。

今週のお題「自己紹介」 に便乗して、恥ずかしくも自分の話を。(このブログの使い方もよくわかっていないので、この次更新するかもわかったもんじゃないんですけど・・・) 今の本屋の初日、22歳の私は「卒業旅行に恐山に1人で行って、自殺しようとしている…

『CURE』的な「特別な人間」の夏帆が、虐げられる『地獄の警備員』的な染谷を救う話としての『予兆』

映画『散歩する侵略者』とWOWOWのテレビドラマとして放送され、後に劇場版が公開されたスピンオフ作品である『予兆―散歩する侵略者-』は同じ概念を奪う侵略者と人間との攻防を描いたものであるが、「愛」「共存」という言葉を軸に陽と陰、まるで違った様相…