映画雑感ー本屋時々映画とドラマ

映画・ドラマレビューばかり書いている書店員のよもやま話

2019-01-01から1年間の記事一覧

『町田くんの世界』の世界

朝、映画を観にいくために電車に乗る。 電車の向かい側で泥だらけの長靴を履いて足をいい感じに組んだ農夫がいかにも絵画のように佇んでいた。 その一席空けた隣に座った、仕事終わりのスナックのママとお姉ちゃんといった具合の、茶髪で露出高めの2人組。 …

WORKS

今まで書いたものをまとめておこうと思います。これからも随時このページで更新していきますのでよろしくお願いします。 web媒体 「リアルサウンド映画部」(テレビドラマ・映画・本レビュー) realsound.jp 「プラスパラビ」(テレビドラマ各話レビュー) p…

本の話。『海苔と卵と朝めし』

ドラマ『きのう何食べた?』の2人があまりに楽しくて、さらには事前に何冊か原作を読んだらハマッちゃって1週間に1冊ずつ読んだりもしていて、なんだか珍しく料理をちゃんとしたくなる今日この頃である。 だが、最近すっかり料理めいているのはそれだけでは…

『未知との遭遇』をしておいおい泣いた

『未知との遭遇』(スティーブン・スピルバーグ)を観た。 今更ながら。恥ずかしながら。 「午前十時の映画祭」で幸運にも映画館で遭遇することができたのだ。 おいおいと泣いた。 周りの人の目が気になるぐらいには一人で泣いていた。 未知なる飛行体と遭遇…

かっこいいじいちゃんとオンディーヌな悪女(『運び屋』と『サスペリア』)

最近観た映画諸々。 『運び屋』(クリント・イーストウッド)と『サスペリア』(ルカ・グァダニーノ)。 『運び屋』は 「じいちゃん、かっこよすぎ!」 に尽きる。 仕事と男の友情にかまけていろいろやらかして家族も離れていって、遂には運び屋稼業に手を出…

ある日常と祝祭(「半世界」)

「なんか、映画みたいだな」 長谷川博己演じる瑛介は終盤、そう呟く。 葬儀場に降る、光に満ちた春の雨が、まるで人生を全うした故人に送る祝いの雨のように降りかかり、哀しみの場所はしみじみとした祝祭の場所に変わる。それと同じように、瑛介の台詞は、…

想像で空は飛べるのか(『唐版 風の又三郎』)

織部:「君はもしかしたら、風の又三郎さんじゃありませんか?」 少年(エリカ):「君はだあれ?」 織部:「僕は読者です」 (『唐版 風の又三郎』(「唐十郎Ⅰ」,ハヤカワ演劇文庫,p.102) いつからだろう。舞台を観ていると淋しくて淋しくて、泣きじゃくりそ…

シャボン玉とクルミのお団子(映画『PARKS』と『モンテ』)

さてさて、せめて一ヵ月更新と心に決めた傍から滑りこみセーフの2月の終わり。 今回は先日お江戸に行った話でも。 とはいえ特段予定があったわけではなく、ただひたすら見たい映画を見るためだけの4日間。 それでも珍しくいろんな人と飲んだり話したり(すご…

地獄巡りと名美巡り、またの名を歌謡曲巡り(『ラブホテル』考)

山口百恵の「夜へ・・・」(1979)は深い、深い闇へと静かに分け入っていく。 少女が女になるその瞬間を、初期の曲の浮き足立った青春の「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」(「ひと夏の経験」)から、ど直球な「あなたの○○○が欲しいのです」(「美・…